「成形品のゲートをニッパーで切る作業、いつか誰かが手を切るのではないか」 「カッターでバリを削る工程は、慣れた人にしか任せられない」
刃物を使う手作業について、現場の責任者や安全担当の方から、こうした心配をよく伺います。
結論から言うと、刃物を使う手作業は「手を刃物から遠ざける」「刃の動きを決める」「刃を覆う」の3つを治具や装置に任せることで、安全にできます。 しかも多くの場合、安全にすると同時に作業も速くなり、仕上がりもそろいます。
この記事では、株式会社関東精密(神奈川県横浜市都筑区)が実際に作ったゲートカット治具・安全カバー付きゲートカット装置・バリ取り自動化装置の3つの実例をもとに、どこまで手をかければよいかの考え方をまとめます。
目次
刃物を使う手作業では、どんな困りごとが起きやすい?
困りごとの多くは「刃物を人の手で押さえ、人の力加減で動かしている」ことから生まれます。
成形品のゲートカット・バリ取りはどんな作業か
プラスチックの射出成形品(溶かした樹脂を型に流し込んで作る部品)には、成形のあとに不要な部分が残ります。
- ランナー(樹脂が型の中を流れてくる通り道。固まると枝のように残る)
- ゲート(ランナーから製品へ樹脂が入る入口。製品とランナーのつなぎ目になる)
- バリ(型のすき間に樹脂がはみ出して固まった、薄いヒレのような部分)
これらをニッパーやカッターで切り離したり、削り取ったりするのが、ゲートカットやバリ取りと呼ばれる作業です。一つひとつは小さな作業ですが、数が多いと一日じゅう刃物を握り続けることになります。
現場でよく聞く心配ごと
刃物を使う手作業について、一般によく挙がる心配は次のようなものです。
- けがの心配:製品を片手で押さえ、もう片方の手で刃物を動かすため、刃の先に自分の指がある
- 疲れがたまる:同じ動きを何百回もくり返すので、手首や指に負担がかかる。疲れてくると手元が狂いやすい
- 仕上がりがばらつく:切る位置や角度が人によって違う。切り残しが出たり、切りすぎて製品に傷がついたりする
- 白化(はっか)が出る:樹脂に無理な力がかかると、その部分が白っぽく変色することがある。見た目の不良になる
- 人が限られる:慣れた人でないと任せられず、休みや退職で工程が止まる
けがの心配と、仕上がりのばらつきは、実は同じところから来ています。「刃物の位置と力を、人の手で決めている」ことです。ですから、ここを治具や装置に置き換えると、両方がいっしょに良くなります。
治具で刃物の作業を安全にする3つの考え方
「手を刃物から遠ざける」「刃の動きを決める」「刃を覆う」の3つです。どれか1つでも効果がありますが、組み合わせるほど安全になります。
ここで言う治具(じぐ)とは、作業のときに製品を決まった位置に置いたり、押さえたり、刃物の通り道を決めたりする専用の道具のことです。
考え方1:手を刃物から遠ざける
「製品を手で押さえなくてよい」状態を作ることが第一歩です。
手作業でけがが起きやすいのは、製品を押さえている手が刃の近くにあるからです。そこで治具では、次の2つを製品の代わりに受け持ちます。
- 位置決め:製品を置くだけで、いつも同じ場所・同じ向きに収まるようにする。製品の形に合わせたくぼみ(倣い形状のポケット)を作るのが代表的なやり方です
- クランプ(締め付けて固定すること):製品が動かないように押さえる。レバーやテコの原理を使えば、弱い力でもしっかり押さえられます
位置決めとクランプの基本は、位置決め・クランプの基礎の記事で詳しく説明しています。
考え方2:刃の動きを決める
刃物が「決まった道しか通れない」ようにすると、力加減や角度を人に任せなくてすみます。
ニッパーやカッターを手で持つと、角度も力も毎回少しずつ変わります。これを、ガイド(刃物の通り道を決める案内役の部品)や、レバーで刃を動かす仕組みに置き換えます。
刃の動きが決まれば、切る位置も深さもそろいます。「切りすぎて製品に傷をつけるのが怖い」という心配も、作業者が抱えなくてすむようになります。
考え方3:刃を覆う
刃が外から見えない・触れない構造にすれば、うっかり手が触れることを防げます。
- 治具の中に刃を収め、刃が外に露出しないようにする
- 装置の場合は、刃が動く範囲全体を安全カバーで囲う
手を刃物から遠ざけ、刃の動きを決めたうえで、最後に刃そのものを覆う。この順番で考えると、どこまで対策すればよいかが整理しやすくなります。
ゲートカットを安全にした関東精密の3つの実例
同じ「刃物を使う切り離し作業」でも、手で動かす治具から、安全カバー付きの装置、自動化装置まで、段階に応じて作り分けています。
実例1:ゲートカット治具(手で動かす卓上治具)
「置いてレバーを引く」だけで、刃に触れずにゲートを切り離せる治具です。1個あたり約70秒かかっていた作業が約10秒になりました。
射出成形品のランナー・ゲートを切り離すための、手で動かす卓上の治具です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大きさ | 約300×400×500mm |
| 筐体(外側の枠)の材質 | アルミ |
| 設計の元にしたもの | 製品サンプルと3Dデータ |
| 使い方 | 製品を置いて、レバーを引く(ワンアクション) |
| 作業時間 | 1個あたり約70秒 → 約10秒(約86%削減・約7倍) |
| 期間 | 設計 約1か月 + 製作 約2週間 |
| 費用 | 50万円(税別) |
先ほどの3つの考え方に当てはめると、次のようになります。
- 手を刃物から遠ざける:製品の形に合わせたくぼみ(倣い形状のポケット)に置くだけで位置が決まる。テコの原理のクランプで押さえるので、手で製品を支える必要がない
- 刃の動きを決める:カッターガイドで、いつも一定の力と角度で切れる
- 刃を覆う:刃が露出しない構造にした
材質には、摩耗(こすれてすり減ること)に強いものを選んでいます。
この治具を入れたことで、パートタイマーの方でも熟練者と同じ仕上がりで作業できるようになりました。安全になっただけでなく、「あの人でないと任せられない」という状態も解消できた例です。
詳しくは実績ページ「ゲートカット治具」をご覧ください。
実例2:安全カバー付きゲートカット装置
安全カバーを付け、より安全に作業できるようにした装置です。
実例1と同じく射出成形品のゲートを切り離すものですが、こちらは卓上の治具ではなく、安全カバー付きの装置として製作しました。費用は150万円(税別)です。
治具は「刃が露出しない構造」で安全を確保しますが、装置では刃が動く範囲をカバーで囲うことで、手が入り込む余地をさらに減らせます。製品の大きさや形、切る箇所の数によっては、治具よりも装置の方が向いている場合があります。
詳しくは実績ページ「安全カバー付きゲートカット装置」をご覧ください。
実例3:バリ取り自動化装置
作業者は材料を入れるだけで、刃物を手で扱わずにバリ取りができる専用装置です。1個90秒の作業が7秒になり、3名で行っていた作業が1名でできるようになりました。
射出成形品(樹脂)のバリ取りを自動で行う装置です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大きさ | 500×400×600mm |
| 仕組み | 成形品の形に合わせてブラシを配置し、自動でバリを取る |
| 作業者の仕事 | 材料を入れるだけ |
| 作業時間 | 1個90秒 → 7秒(約92%削減・約12.8倍) |
| 人数 | 3名 → 1名 |
| 期間 | 構想〜完成 約3〜6か月 |
| 費用 | 約300万円(税別) |
バリの取り方(工法)を決めるところから始め、機械・電気・PLC(装置の動きを制御する小さなコンピューター)・回路基板の設計、組立、現地での調整まで、当社一社で行いました。
作業者が刃物を手に持つ場面そのものをなくしたので、3つの考え方でいえば「手を刃物から遠ざける」を最後まで突きつめた形です。
詳しくは実績ページ「バリ取り自動化装置」をご覧ください。
手作業・治具・安全カバー付き装置・自動化装置は、どう選べばよい?
「作業の量」と「どこまで人の手を刃物から離したいか」で選びます。いきなり自動化を目指す必要はありません。
4つのやり方の比較
| 手作業 | 治具 | 安全カバー付き装置 | 自動化装置 | |
|---|---|---|---|---|
| 実例 | (治具導入前) | ゲートカット治具 | 安全カバー付きゲートカット装置 | バリ取り自動化装置 |
| 作業者がすること | 製品を押さえ、刃物を動かす | 製品を置いてレバーを引く | ― | 材料を入れる |
| 刃との距離 | 刃の近くに手がある | 刃が露出しない構造 | 安全カバーで覆う | 刃物を手で扱わない |
| 1個あたりの時間 | 約70秒(ゲートカット)/90秒(バリ取り) | 約10秒 | ― | 7秒 |
| 人数 | 3名(バリ取り) | ― | ― | 1名 |
| 費用(税別) | ― | 50万円 | 150万円 | 約300万円 |
| 期間 | ― | 設計約1か月+製作約2週間 | ― | 約3〜6か月 |
※「―」は、実績ページに数値の記載がない項目です。
選ぶときの目安
- まずは治具から:作業の流れは今のまま、刃に触れない・力加減を人に任せない状態を作れます。費用と期間をいちばん抑えられます
- 装置にするとき:刃が動く範囲全体を覆いたい場合や、治具では手が刃に近づく場面が残る場合は、安全カバー付きの装置を検討します
- 自動化するとき:数が多く、人手がかかっている作業なら、自動化で「刃物を手で扱わない」状態まで持っていけます。人を別の仕事に回せる効果も大きくなります
治具は、1台の設計・製作の費用がその1台にすべてかかるため、どうしても「1個もの」の値段になります。費用の考え方は治具製作の費用の記事で詳しく説明しています。
また、使わなくなった治具がある場合は、新しく作らずに改造して使える場合もあります(費用は新規製作の30〜50%が目安)。詳しくは治具の改造・改修をご覧ください。
刃物の手作業を相談するとき、何を伝えればよい?
「どんな製品を、何で、どう切っているか」が分かる写真や動画があれば、図面がなくても相談できます。
次のことが分かると、治具にするか装置にするかの判断が早くなります。
- 製品の写真(切る前と切った後の両方があると分かりやすい)
- 今の作業の様子(どう押さえて、何の刃物で、どこを切っているか。スマートフォンの動画でも構いません)
- 1日・1か月あたりの数量と、何人で作業しているか
- 今困っていること(けがの心配、時間がかかる、仕上がりのばらつき、白化など)
- 製品の3Dデータや図面(あれば。なくても構いません)
- 予算や時期の目安(決まっていれば)
図面がない場合でも、製品の現物を3Dスキャン(立体の形を読み取ること)して、製品の形を反転させたくぼみ(ネガ形状)を持つ治具を設計する方法があります。
お問い合わせフォームからは、写真や資料を最大10枚まで添付できます。
関東精密が選ばれる理由
治具を「使う側」の目線で設計し、部品加工から組立まで一社で仕上げられることです。
1. 自社で部品加工をしている現場目線の設計
当社は精密部品の加工を自社で行っているメーカーです。そのため、「作業する人が本当に使いやすいか」「刃物のそばに手が行かないか」を、製造業の現場目線で考えて設計できます。
2. 設計から部品加工・組立まで一貫対応
治具の設計、部品の加工、組立までを一貫してお受けしています。バリ取り自動化装置のように、機械・電気・PLCまで含めた装置も、組立・現地調整まで一社で対応した実績があります。
3. 加工精度±0.001mm、平均20年以上の熟練技術
加工精度は±0.001mm(1000分の1ミリ)。平均20年以上の経験を持つ技術者が、同時5軸マシニングセンター(マザック VARIAXIS C-600)などの設備で加工します。刃物のガイドのように、わずかなずれが仕上がりに響く部品も、精度よく作れます。
4. 図面がなくても、写真1枚から相談できる
図面がない段階でも、現物や写真からご相談を伺います。見積もりは即日返信を心がけており、全国発送にも対応しています。
5. 機密の扱いと、秘密保持契約(NDA)への対応
お預かりした製品や資料は社内で厳重に管理します。秘密保持契約(NDA:外部に情報を漏らさないという約束の契約)にも対応しています。
よくある質問
Q1. ニッパーで切っている作業も、治具で安全にできますか? A. はい。ニッパーやカッターで手で切っている作業を、「置いてレバーを引く」だけの治具に置き換えた実例があります(ゲートカット治具)。刃が露出しない構造にし、製品は治具が押さえるので、手が刃に近づきません。
Q2. 安全にすると、作業が遅くなりませんか? A. 多くの場合、逆に速くなります。ゲートカット治具では1個あたり約70秒が約10秒に、バリ取り自動化装置では1個90秒が7秒になりました。製品を押さえる・角度を合わせるといった手間を、治具や装置が受け持つためです。
Q3. 治具と装置は、どちらを選べばよいですか? A. 数量や、どこまで手を刃物から離したいかで決めます。まず治具で考え、刃が動く範囲全体を覆いたい場合は安全カバー付きの装置、数が多く人手がかかる場合は自動化装置を検討します。ご相談いただければ、作業の様子を伺ったうえでご提案します。
Q4. 費用はどのくらいかかりますか? A. 実例では、ゲートカット治具が50万円(税別)、安全カバー付きゲートカット装置が150万円(税別)、バリ取り自動化装置が約300万円(税別)でした。製品の形や作業の内容によって変わりますので、お見積もりでご確認ください。
Q5. どのくらいの期間でできますか? A. ゲートカット治具は設計約1か月+製作約2週間、バリ取り自動化装置は構想から完成まで約3〜6か月でした。治具の開発期間は1か月〜が目安です。
Q6. パートタイマーや新人でも使えますか? A. はい。ゲートカット治具は、パートタイマーの方でも熟練者と同じ仕上がりで作業できるようになった例です。位置と力加減を治具が決めるので、経験による差が出にくくなります。
Q7. 図面がなくても相談できますか? A. できます。製品の写真や作業の動画からご相談を伺います。現物を3Dスキャンして、製品の形に合わせた治具を設計する方法もあります。
Q8. 神奈川県外からでも頼めますか? A. はい。全国発送に対応しています。お問い合わせフォームから写真や資料を最大10枚まで添付できますので、まずは今の作業の写真をお送りください。
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お問い合わせ
「この刃物の作業、なんとか安全にできないか」と思ったら、今の作業の写真を1枚お送りください。代表の杉田がお話を伺います。
株式会社関東精密 〒224-0053 神奈川県横浜市都筑区池辺町4826-2 TEL:045-534-5427(平日9:00〜17:00) 治具の設計・製作サイト:https://kanto-jigu.jp/