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  • 作業する人によって仕上がりが違うのは、治具でなくせる? ― 手作業のばらつきをそろえる考え方と実例
2026.10.07
コラム

「ベテランがやるときれいなのに、新人がやると仕上がりがばらつく」「パートの方には任せられない工程がある」。手作業の工程を抱える現場で、よく聞くお悩みです。

結論から言うと、作業する人による仕上がりの違いは、多くの場合、治具(じぐ:製品を決まった位置に置き、決まったやり方で作業させるための道具)でそろえられます。 ばらつきの原因は「人の腕」そのものより、「置く位置」「押さえる力」「刃物や工具を当てる角度」「良し悪しの見きわめ」が、人によって少しずつ違うことにあるからです。治具はこの4つを、人の感覚から道具の形に移しかえます。

この記事では、なぜ手作業はばらつくのか、治具でそろう理由、横浜市都筑区の株式会社関東精密で手がけた実例、治具にする前に整理しておきたいことを順にご説明します。

目次

手作業の仕上がりは、なぜ人によってばらつくのか?

作業の中に「その人の感覚で決めている部分」が残っているからです。

たとえば「部品の角を刃物で切り落とす」という作業ひとつでも、実際には次のような判断が毎回行われています。

  • 部品をどこに、どの向きで置くか
  • どのくらいの力で押さえるか
  • 刃物をどの角度で、どこから当てるか
  • 切り終わった後、「これで良し」とするかどうか

熟練の方は、これを長年の経験で毎回ほぼ同じようにこなします。一方、経験の浅い方は、同じ手順書を見ていても、置く位置が1〜2mmずれたり、力の入れ方が日によって違ったりします。手順書には「しっかり押さえる」「まっすぐ切る」とは書けても、「どのくらい」「どの角度で」までは書ききれません。

ばらつきが出やすい手作業の例

「位置」「力」「角度」「判定」のどれかを人に任せている工程は、ばらつきが出やすい工程です。

作業 人によって違いが出やすいところ
切る(ゲートカットなど) 刃を当てる位置・角度、切る力
削る・バリ取り(はみ出した余分な部分を取る作業) 取る量、削りすぎ・取り残し
穴をあける・溝を彫る 部品をつかむ位置、中心からのずれ
検査する 測る場所、測り方、合否の見きわめ
塗る 吹き付ける位置、塗らない部分の隠し方

「うちの工程にも当てはまる」と思われたら、治具で改善できる余地があると考えてよいでしょう。

治具を使うと、なぜ仕上がりがそろうのか?

人が毎回決めていた「位置・力・角度・判定」を、治具の形があらかじめ決めてしまうからです。 作業する人は「置く」「レバーを引く」「差し込む」といった単純な動作をするだけになり、誰がやっても同じ結果に近づきます。

治具に持たせる役割は、大きく分けて次の4つです。

1. 位置決め:置くだけで、毎回同じ場所に収まる

製品の形に合わせたくぼみやピンで、「置く場所」を1か所しかない状態にします。

製品の外形に沿ったくぼみ(倣い形状:ならいけいじょう。製品の形をなぞった形)を作ったり、決まった穴にピンを差し込んだりすると、製品はそこにしか収まりません。「だいたいこの辺」がなくなるので、位置のばらつきがなくなります。

位置決めの基本的な考え方は、治具の位置決めとクランプの基礎で詳しくご説明しています。

2. 押さえ方(クランプ):毎回同じ力で固定する

押さえる力を人の手加減ではなく、レバーやばねなどの仕組みに任せます。

クランプ(部品を押さえて固定する仕組み)を、テコの原理のレバーなどで作ると、誰が操作しても押さえる力がほぼ一定になります。力が弱すぎて部品が動く、強すぎて樹脂の部品がゆがむ、といった失敗を防げます。

3. 刃物・工具の導き方(ガイド):角度と通り道を決める

刃物や工具が通る道を治具側に作っておき、決まった角度でしか当たらないようにします。

カッターガイド(刃物の通り道を決める部品)やドリルブッシュ(ドリルの通り道になる筒)があれば、作業者は「まっすぐ切ろう」と意識しなくても、刃物は決まった角度で進みます。熟練者の「手の感覚」を、道具の形に置きかえるイメージです。

4. 合否の判断:見て迷うのではなく、入るか入らないかで決める

「良品ならピンが入る」「不良なら入らない」のように、判定を治具の形にしておきます。

ノギス(部品の寸法を測る道具)で測って数字を読む検査は、測る場所や読み取りに個人差が出ます。検査治具(部品の良し悪しを確かめるための治具)にして、「はまる・はまらない」で判断できれば、判定に迷う時間も、人による差もなくなります。この考え方は機能ゲージ・限界ゲージの解説でも取り上げています。

4つの役割のまとめ

治具の役割 人任せのとき 治具にしたとき
位置決め 目で見て「だいたい」合わせる 置くだけで決まった位置に収まる
押さえ方 手加減で強さが変わる レバーなどで毎回同じ力
刃物・工具の導き方 角度・位置は腕しだい ガイドに沿って決まった角度で進む
合否の判断 測り方・読み方で差が出る 入る・入らないで一目で分かる

作業用の治具全般の考え方は、作業治具と生産性の記事もあわせてご覧ください。

関東精密の実例:ばらつきを治具でそろえた4つのケース

当社の実例では、作業時間の短縮と同時に「誰がやっても同じ仕上がり」を実現しています。 数字は下の表のとおりです。

実例 何をそろえたか 導入の効果
ゲートカット治具 位置・押さえる力・刃の角度 1個あたり約70秒 → 約10秒(約86%削減)。パートタイマーでも熟練者と同じ仕上がり
樹脂ギヤのキー溝加工治具 位置・押さえ方 製品を入れるだけにして、不良がほぼなくなった
弓形部品の穴の検査治具 合否の判断 1個の検査が一瞬で終わる
バリ取り自動化装置 作業そのものを機械に 1個 90秒 → 7秒(約92%削減)。作業者 3名 → 1名

ゲートカット治具:置いてレバーを引くだけで、熟練者と同じ仕上がりに

「置く・レバーを引く」のワンアクションにしたことで、パートタイマーの方でも熟練者と同じ仕上がりになりました。

射出成形品(樹脂を金型に流し込んで作る部品)には、ランナー・ゲート(樹脂の通り道だった部分)が付いた状態で出てきます。これを切り離す作業は、刃を当てる位置や角度、力の入れ具合で仕上がりが変わる、まさに「人によって差が出る」作業です。

当社では、製品サンプルと3Dデータをもとに、次のような手で動かす卓上治具(約300×400×500mm、筐体はアルミ)を設計しました。

  • 位置決め:製品の形に合わせた倣い形状のポケットで、置くだけで位置が決まる
  • 押さえ方:テコの原理のクランプで、毎回一定の力で押さえる
  • 刃の導き方:カッターガイドで、刃が決まった角度で入る
  • 安全:刃が外に出ない構造で、摩耗に強い材質を使用

結果、1個あたりの作業時間は約70秒から約10秒になり、約7倍の速さになりました。期間は設計約1か月+製作約2週間、費用は50万円(税別)です。

樹脂ギヤのキー溝加工治具:入れるだけで位置が決まり、不良がほぼゼロに

製品を「入れるだけ」の状態にしたことで、位置ずれによる不良がほぼなくなりました。

キー溝(軸と歯車を回らないようにつなぐための細い溝)は、歯車の中心の穴に対して正しい位置に彫らなければなりません。つかむ位置が少しずれるだけで、溝の位置もずれてしまいます。

この治具では、樹脂の歯車を決まった位置で押さえ、治具そのものを機械に固定しました。作業する人は製品を入れるだけです。「どこでつかむか」を人が決める場面がなくなり、不良がほぼなくなりました。

弓形部品の穴の検査治具:測って迷う検査を、一瞬で終わる検査に

穴の位置に合わせてピンを配置し、穴の位置関係と直径を確かめられるようにしました。

弓形(弓のように反った形)の製品は、平らな部品に比べて測る基準が取りにくく、穴の位置関係や直径を確かめるのに手間がかかります。この検査治具では、正しい穴の位置に合わせてピンを配置しました。その結果、1個の検査が一瞬で終わるようになりました。

バリ取り自動化装置:人の手そのものを機械に置きかえた例

手作業では限界がある場合は、専用装置にして作業者を3名から1名に減らした例もあります。

射出成形品のバリ取りは、取る量が人によって変わりやすい作業です。この例では、成形品の形に合わせてブラシを配置した専用装置(500×400×600)を作りました。機械・電気・PLC(機械を自動で動かすための制御装置)・回路基板まで社内で設計し、組立・現地調整まで一社で行っています。1個90秒が7秒になり、作業者は3名から1名になりました。構想から完成までは約3〜6か月、費用は約300万円(税別)です。

手で動かす治具と、自動の装置の比べ方

まずは手で動かす治具で足りるかを考え、それでも人手や時間が足りない場合に装置を検討する、という順番が現実的です。

手で動かす治具(ゲートカット治具の例) 自動の装置(バリ取り装置の例)
作業する人 必要(ただし誰でも同じ仕上がり) 人数を減らせる(3名→1名)
作業時間 約70秒 → 約10秒 90秒 → 7秒
期間の目安 設計約1か月+製作約2週間 構想〜完成 約3〜6か月
費用の例 50万円(税別) 約300万円(税別)

どちらが合うかは、1日に何個作るのか、何人で作業しているのかによって変わります。

なお、ベンダー用曲げ型の加工治具のように、長さや厚みの違う型をまとめて載せても位置がそろう治具を作り、段取り時間(加工の準備にかかる時間)を3分の1にした例もあります。「毎回の位置合わせに時間がかかる」というお悩みにも、同じ考え方が使えます。

治具にする前に、整理しておきたいこと

「どの工程の、何がばらついているのか」を言葉にしておくと、治具の設計が早く、的確になります。

完璧に整理できていなくても、ご相談はいただけます。ただ、次の点が分かっていると話がスムーズです。

ばらつきの中身を書き出す

「切り口が斜めになる」「穴の位置がずれる」など、不良の出かたを具体的に書き出してください。

  • どの工程で、どんな不良が出ているか
  • 熟練者と新人とで、仕上がりのどこが違うか
  • 1日に何個くらい作業しているか、何人で作業しているか

手元にある材料を集める

図面がなくても、製品サンプルや写真があれば相談を始められます。

  • 製品のサンプル(実物)
  • 3Dデータや図面(あれば)
  • 今の作業のようすが分かる写真や動画

当社では、図面がない段階からのご相談をお受けしています。現物を3Dスキャン(立体の形を読み取って、データにすること)し、その形を反転させた治具(ネガ形状の治具)を設計する方法もあります。

「治具に任せること」と「人がやること」を分ける

全部を治具にしようとせず、ばらつきの原因になっている部分から治具に任せるのが近道です。

たとえばゲートカット治具の例でも、製品を置く・レバーを引くのは人の役目です。「位置・力・角度」だけを治具に任せたことで、シンプルな治具のまま効果が出ました。

ご依頼から納品までの流れは治具製作の依頼の流れ、費用の考え方は治具製作の費用で詳しくご説明しています。

関東精密が選ばれる理由

自社で部品加工をしている精密加工メーカーだからこそ、現場の目線で「使いやすく、ばらつかない治具」を設計できることです。

1. 部品加工の現場を知っているから、現場目線で設計できる

当社は治具を作るだけでなく、自社で部品加工を行っています。作業する人がどこで迷い、どこでミスをしやすいかを知ったうえで設計できるのが強みです。平均20年以上の熟練技術を持つ職人が、最新の設備で加工します。

2. 図面がなくても、相談ベースから始められる

図面がない状態でも、製品サンプルや写真からご相談いただけます。現物の3Dスキャンをもとに、製品の形に合わせた治具を設計することもできます。

3. 設計から部品加工、組立まで一貫して対応

治具の設計、部品の加工、組立までを社内で一貫して行います。手で動かす治具から、自動のバリ取り装置のような装置製作まで、窓口は一つです。

4. 加工精度 ±0.001mm

治具の精度は、そのまま製品の仕上がりに表れます。当社は加工精度 ±0.001mm(1000分の1ミリ)で治具を製作しています。

5. 見積もりは即日返信。秘密保持契約にも対応

お見積もりは即日返信を心がけています。製品の形や工程は大切な情報ですので、社内で厳重に管理し、秘密保持契約(NDA:情報を外に出さない約束の契約)にも対応します。全国への発送も可能です。

よくある質問

Q1. 治具を入れれば、熟練者でなくても同じ品質になりますか?

位置・押さえる力・刃物の角度・合否の判断といった「人によって違う部分」を治具に任せれば、同じ品質に近づけられます。 当社のゲートカット治具では、パートタイマーの方でも熟練者と同じ仕上がりになりました。

Q2. 図面がなくても相談できますか?

はい、できます。製品のサンプルや写真、3Dデータがあれば、そこから設計を始められます。現物を3Dスキャンして、製品の形に合わせた治具を設計する方法もあります。

Q3. 費用はどのくらいかかりますか?

内容によって大きく変わります。当社の実例では、手で動かすゲートカット治具が50万円(税別)、バリ取り自動化装置が約300万円(税別)でした。1台だけ作る治具は、設計や製作の費用がすべてその1台にかかるため、どうしても単価が高くなります。詳しくは治具製作の費用をご覧ください。

Q4. 完成までどのくらいかかりますか?

治具の開発期間は1か月からが目安です。ゲートカット治具は設計約1か月+製作約2週間、バリ取り自動化装置は構想から完成まで約3〜6か月でした。

Q5. 手で動かす治具と自動の装置、どちらがいいですか?

作業する数や人数によって変わります。まず手で動かす治具で仕上がりをそろえられるかを考え、それでも人手が足りない場合に装置を検討するのが現実的です。ご相談いただければ、工程を伺ったうえで一緒に考えます。

Q6. 今使っている治具を直して、ばらつきを減らすことはできますか?

はい、できます。当社では使わなくなった治具や、摩耗した治具の改造・改修も行っています。費用は新しく作る場合の30〜50%が目安で、摩耗した箇所だけを差し替えて位置ずれを解消した例もあります。写真や図面を送っていただければ、診断・評価は無料です。詳しくは治具の改造・改修をご覧ください。

Q7. 横浜から離れていても頼めますか?

はい。全国への発送に対応しています。お問い合わせフォームには、画像や資料を最大10枚まで添付できますので、製品や作業のようすの写真をお送りください。

Q8. 製品の情報を外に出したくないのですが。

お預かりした情報は社内で厳重に管理します。秘密保持契約(NDA)にも対応しますので、ご相談の段階でお申し付けください。

手作業のばらつきでお困りなら、関東精密にご相談ください

「人によって仕上がりが違う」「熟練者がいないと回らない」という工程は、治具で変えられる可能性があります。図面がなくても、写真1枚からでも構いません。代表の杉田が直接お話を伺います。

  • お問い合わせフォーム(画像・資料を最大10枚添付できます)
  • 電話:045-534-5427(平日9:00〜17:00)
  • FAX:045-507-4223

治具の設計・製作について詳しくは治具の設計・製作、ほかの事例は実績一覧をご覧ください。

株式会社関東精密 〒224-0053 神奈川県横浜市都筑区池辺町4826-2 治具の設計・製作:https://kanto-jigu.jp/

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